JPD データレポート 第1号

新薬の薬価算定 20年の実測(2007〜2026年)

中央社会保険医療協議会(中医協)で了承された新医薬品の薬価算定 1,040件を、算定資料から1件ずつ構造化して数えました。 対象は2007年9月21日から2026年8月13日までの105回の薬価収載です。予想や評価は含めず、公表資料に書かれた事実だけを集計しています。

公開:2026年10月2日/集計:2026年10月1日/ヘルスル株式会社(JPD 調べ)

要点

  1. 27.2% → 62.5%

    類似薬効比較方式(Ⅰ)で補正加算が付いた割合。2013〜17年は147件中40件、2022〜25年は136件中85件でした。

  2. 60件中 43件

    原価計算方式で補正加算に該当したのに、薬価に上乗せされなかった件数(2022年以降)。加算係数が0だったためです。2018〜21年は、該当した36件のうち上乗せされなかった件は確認できませんでした。

  3. 57.3%/27.3%

    類似薬効比較方式(Ⅰ)と原価計算方式の割合(全期間)。原価計算方式の割合は、2008〜12年の32.4%から、2013年以降は24〜27%で推移しています。

  4. 中央値 58日

    承認から薬価収載までの日数。74.5%が60日以内、92.3%が90日以内に収載されました(承認日を確認できた995件)。

1. 対象と数え方

中医協の「新医薬品の薬価算定について」の資料に載っている算定を、整理番号ごとに1件と数えました(1つの成分・製品群が1件。規格ごとの行数ではありません)。2007年9月21日から2026年8月13日までに収載された1,040件、105回の収載が対象です。2007年は9月〜、2026年は〜8月の収載分です。

算定方式・比較薬・補正加算・外国平均価格調整・原価計算の内訳は、資料の記載をそのまま構造化しています。各件の元の資料(厚生労働省のPDF、122本)は、新薬の薬価収載の一覧と各品目のページからたどれます。

2. 算定方式の内訳:類似薬効比較方式(Ⅰ)が57.3%、原価計算方式が27.3%

算定方式件数割合
類似薬効比較方式(Ⅰ)59657.3%
類似薬効比較方式(Ⅱ)706.7%
原価計算方式28427.3%
規格間調整555.3%
その他(新医療用配合剤の特例など)353.4%
年ごとの算定件数と算定方式
  • 類似薬効比較方式(Ⅰ)
  • 原価計算方式
  • その他(類似薬効比較方式(Ⅱ)・規格間調整・配合剤の特例など)
030609020'079月〜81'0869'0950'1049'1141'1259'1364'1459'1558'1638'1753'1852'1942'2053'2158'2249'2357'2452'2536'26〜8月件

棒の上の数字は、その年の算定件数の合計です。

期間ごとの比較
収載年算定件数原価計算方式原価計算方式の割合
2008〜2012年2909432.4%
2013〜2017年2787125.5%
2018〜2021年2004824%
2022〜2025年2165826.9%

3. 補正加算:類似薬効比較方式(Ⅰ)で加算が付く割合は、近年6割前後に

類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定された595件のうち、補正加算(画期性・有用性・市場性・小児・先駆・特定用途・迅速導入のいずれか)が付いたのは262件(44%)でした。 このうち61件は、2種類以上の加算が同時に付いています。

類似薬効比較方式(Ⅰ)で補正加算が付いた割合(収載年ごと)
0%25%50%75%100%43'07n=1459'08n=2951'09n=5133'10n=3042'11n=2624'12n=2129'13n=2838'14n=3719'15n=3227'16n=2621'17n=2443'18n=3534'19n=3535'20n=2044'21n=2767'22n=3654'23n=3775'24n=3255'25n=3167'26n=24

棒の上は割合(%)、下の n は類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定された件数です。件数の少ない年は、割合が大きく動きます。

期間ごとの比較(類似薬効比較方式(Ⅰ))
収載年算定件数補正加算あり割合
2008〜2012年1576943.9%
2013〜2017年1474027.2%
2018〜2021年1174639.3%
2022〜2025年1368562.5%

加算の種類ごとの件数と加算率

最も多いのは有用性加算(Ⅱ)で、その約7割は加算率5%です。市場性加算(Ⅰ)は10%がほとんどです。原価計算方式の件数は、補正加算が適用されるようになった2018年度以降の分です。

加算件数うち類似(Ⅰ)うち原価計算加算率ごとの件数
画期性加算51475%:4、100%:1
有用性加算(Ⅰ)51302125%:1、35%:19、40%:17、45%:13、50%:1
有用性加算(Ⅱ)235173625%:161、10%:56、15%:8、20%:6、25%:2、30%:2
市場性加算(Ⅰ)11048625%:3、10%:93、15%:11、20%:3
市場性加算(Ⅱ)9423%:1、5%:8
小児加算825495%:48、10%:24、15%:7、20%:3
先駆加算116510%:11
特定用途加算20110%:2
迅速導入加算11835%:7、10%:4

1件の算定に複数の規格・剤形があり加算率が異なる場合は、加算率ごとに数えています。類似(Ⅰ)と原価計算の合計が件数より少ない加算は、規格間調整などで算定された件を含みます。各加算の要件は補正加算の一覧と要件をご覧ください。

画期性加算と、有用性加算(Ⅰ)45%以上が付いた品目

収載日販売名算定方式加算出所
2015年5月20日ソバルディ錠400mg類似薬効比較方式(Ⅰ)画期性加算 100%中医協資料
2018年5月22日プレバイミス錠240mg原価計算方式画期性加算 75%中医協資料
2024年5月22日サルグマリン吸入用250μg原価計算方式画期性加算 75%中医協資料
2025年8月14日ウェリレグ錠40mg原価計算方式画期性加算 75%中医協資料
2018年5月22日ヘムライブラ皮下注30mg類似薬効比較方式(Ⅰ)有用性加算(Ⅰ) 50%中医協資料
2016年5月25日タフィンラーカプセル50mg類似薬効比較方式(Ⅰ)有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2016年5月25日メキニスト錠0.5mg類似薬効比較方式(Ⅰ)有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2018年4月18日デュピクセント皮下注300mgシリンジ原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2019年11月19日クリースビータ皮下注10mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2023年12月20日レケンビ点滴静注200mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2024年4月17日ゾキンヴィカプセル50mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2024年4月17日レブロジル皮下注用25mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2024年5月22日ビキセオス配合静注用原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2024年11月20日アセノベル徐放錠500mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2024年11月20日テッペーザ点滴静注用500mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2025年4月16日イムデトラ点滴静注用1mg類似薬効比較方式(Ⅰ)有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2025年5月21日カムザイオスカプセル1mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料
2025年8月14日エアウィン皮下注用45mg原価計算方式有用性加算(Ⅰ) 45%中医協資料

4. 原価計算方式:2022年以降、補正加算に該当した60件のうち43件は薬価に上乗せされず

原価計算方式では、補正加算の額に、開示度(製品総原価のうち薬価算定組織に開示できる額の割合)に応じた加算係数を掛けます。開示度が50%未満だと加算係数は0で、補正加算に該当しても薬価には上乗せされません(加算係数と開示度)。

2018年度以降に原価計算方式で算定された114件のうち、96件(84.2%)が補正加算に該当しました。 この96件について、算定資料の「加算前」と「加算後」の額を比べると、2018〜21年は36件中35件で薬価に上乗せされていました。 2022年以降は60件中16件にとどまり、43件は加算前と加算後が同じ額でした。2026年(〜8月)は、該当した8件すべてで上乗せがありませんでした。

原価計算方式で補正加算に該当した件数:薬価に上乗せされたか(収載年ごと)
  • 上乗せされた(加算後>加算前)
  • 上乗せされなかった(加算後=加算前)
  • 資料から額を確認できない
0612189'188'198'2011'2112'2210'2317'2413'258'26〜8月件
収載年201820192020202120222023202420252026
補正加算に該当98811121017138
薬価に上乗せされた97811221020
上乗せされなかった00001087108

1件に複数の規格がある場合は、いずれかの規格で加算後の額が加算前を上回れば「上乗せされた」と数えています。加算前・加算後の額を資料から確認できなかった件が、2019年と2025年に1件ずつあります。

5. 外国平均価格調整:外国価格の記載がある702件のうち、引上げ89件・引下げ48件

算定資料に外国価格の記載があった702件のうち、外国平均価格調整で引き上げられたのは89件(12.7%)、引き下げられたのは48件(6.8%)でした。 残りは調整の対象になっていません。調整の件数は2014〜17年に多く、2018年以降は年に数件です。

収載年'07'08'09'10'11'12'13'14'15'16'17'18'19'20'21'22'23'24'25'26
外国価格の記載あり1650473638313538405130373223323536343724
引上げ3463123813107434142164
引下げ04000433775221023320

調整のしくみは外国平均価格調整の解説をご覧ください。

6. 承認から薬価収載まで:中央値58日、92.3%が90日以内

算定された品目の直前の承認日を確認できた995件について、承認日から薬価収載日までの日数を数えました。 中央値は58日で、74.5%が60日以内、92.3%が90日以内に収載されています。

中央値
58日
60日以内
74.5%
90日以内
92.3%
収載年'07'08'09'10'11'12'13'14'15'16'17'18'19'20'21'22'23'24'25'26
中央値(日)5258565673606060595856605956585858575586
60日以内(%)10058977643669571958895667590717552717143

承認日は、同じ品目の承認のうち収載日の直前(400日以内)のものを使っています。承認日から収載時期の目安を出す計算は薬価収載の解説にあります。

7. 薬効分類ごとの件数と、補正加算が付いた割合

件数の多い薬効分類(3桁)を並べました。最も多いのは「その他の腫瘍用薬」で、全体の約16%を占めます。

薬効分類算定件数類似(Ⅰ)原価計算原価計算の割合補正加算が付いた割合
その他の腫瘍用薬(429)1671184325.7%60.4%(81/134)
他に分類されない代謝性医薬品(399)113563732.7%47.3%(35/74)
抗ウイルス剤(625)6047915%55.6%(30/54)
その他の循環器官用薬(219)3926820.5%37.5%(12/32)
眼科用剤(131)3620411.1%40.9%(9/22)
その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。)(249)3517925.7%40.9%(9/22)
血液製剤類(634)35141028.6%76.5%(13/17)
その他の中枢神経系用薬(119)34231029.4%40.7%(11/27)
精神神経用剤(117)312013.2%45%(9/20)
糖尿病用剤(396)312013.2%20%(4/20)
その他のアレルギー用薬(449)3020310%54.5%(12/22)
抗てんかん剤(113)2622415.4%63.6%(14/22)

「補正加算が付いた割合」の分母は、類似薬効比較方式(Ⅰ)の全期間と、原価計算方式の2018年度以降の件数です。

このレポートの作り方

このレポートは、JPD(国内の医薬品の公的情報を品目ごとにつないだデータベース)に入っている薬価算定のデータから集計しました。使った条件は次のとおりです。

目的
新薬の薬価算定の全体像(算定方式・補正加算・加算係数・外国平均価格調整・収載までの日数)を、年ごとの推移で示す
使ったデータ
薬価算定(算定方式・比較薬)、補正加算(種類・加算率・適用の有無)、原価計算(加算前・加算後の額)、外国価格と調整、承認(承認日)、薬効分類
条件
収載日 2007年9月21日〜2026年8月13日/整理番号ごとに1件/補正加算は「適用あり」のもの/原価計算方式の補正加算は2018年度以降の収載
出所
中医協「新医薬品の薬価算定について」ほか(厚生労働省、122本)、PMDA 新医薬品の承認品目一覧
データの版
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利用上の注意

  • 公表資料の記載を構造化して数えたものです。資料に記載のない項目は数えていません。資料の誤りや、構造化の際の読み違いを含む可能性があります。業務では元の資料でご確認ください。
  • 2007年と2026年は、1年分のデータではありません。件数の少ない年は、割合が大きく動きます。
  • 制度は期間中に何度も変わっています(補正加算の要件、原価計算方式への補正加算の適用、外国平均価格調整のルールなど)。年ごとの数字の違いには、制度の変更の影響が含まれます。
  • このレポートは今後の算定を予想するものではありません。
  • 出典を明記すれば、社内資料・報告書・記事などに自由に転載できます(利用条件)。表記の例:「ヘルスル JPD データレポート『新薬の薬価算定 20年の実測』」。
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